きっかけは「この子、つらそう…」という想いから

16歳を過ぎた頃から、うちの愛犬・ルイの体は、少しずつ動かなくなっていきました。
それまで元気に歩き回っていたのに、ある日を境に立ち上がることもままならず、寝たきりの生活が始まりました。

毎日そばにいる私たちには、その変化が何よりつらくて。
「苦しいのかな」「もう限界なのかな」と、不安ばかりが募る日々。
何をしてあげるのが一番いいのか、わからなくなっていました。

そんなとき、アニマルトーク・メッセンジャーのすみえさんに相談する機会がありました。
そこで届けられたルイからのメッセージは、思いがけないものでした。

「体が重たいな〜」毛皮を脱ぐ準備をするルイ

「体が動かないだけで、気持ちは元気だよ」
「体が重たいな〜、そろそろ毛皮を脱いでお着替えしようかな」
「でもまだ、パパとママが大変だから、僕が守らなきゃ」

そう伝えてくれたルイの言葉に、私も夫も涙が止まりませんでした。
ルイはただ寝ていたんじゃない。苦しんでいたのでもなかった。
体はもう限界を迎えていたけれど、魂は、使命をもって今ここにいたんだ。

約6kgのトイプードル。少し大きめだったルイの寿命は、一般的には16歳くらい。
それを超えて、17歳と5ヶ月という奇跡の時間を、私たちと過ごしてくれました。

1年間の介護生活――夜中に目覚めるたび思ったこと

介護の生活は、決して楽なものではありませんでした。
ルイは動きたくても動けず、寝返りも自分では打てません。
動こうと必死になって、うんちが散乱していることもしょっちゅう。
頭を打ち付ける音で、夜中に何度も目を覚ます日々が続きました。

私と夫は交代で外出し、どちらかは必ず家にいる生活。
自由なんてなかったけれど、それでも私たちは一緒にいられることを選びました。

あのときのルイは、本当に「守ってくれていた」のだと思います。
家の中にぬくもりがあって、静かで、でも確かに命の気配がある――
それは彼が命を使って与えてくれていた、最後のギフトでした。

「犬の気持ち」――ルイからのラブレターを音楽に

ルイが旅立って、3ヶ月が経ったある朝のこと。
ふと、言葉が降りてきました。

「これは…歌詞だ」

そう直感し、慌ててスマホに記録しました。
すると不思議なことに、その日の午後にはメロディーも出来上がっていたんです。

それは、DTMを始めた頃に作ってボツにした曲がベースでした。
テンポが75で、自分には合わず、当時はお蔵入りにしていたのですが、
ふと「もしかして使えるかも」と思ってテンポを100以上に上げてみたら、
あっという間に編曲が完成しました。

2日でほぼ仕上がったこの曲。
これはもう、ルイが「やって」くれたとしか思えません。

光になったルイを音にのせて

オケには、光になったルイをイメージして、チャイムの音を入れました。
ストリングスも重ねて、命のきらめきを音にしました。

素朴なオルガンから始まり、最後はラスサビへと盛り上げていく――
まるでルイの人生を辿るような構成になりました。

ただ、あまりに思い出が詰まりすぎていて、
この曲を通しで歌うことはできませんでした。

歌いながら泣いてしまって、声が出なくなるんです。
レコーディングのときも、ラスサビだけは別録りしました。

魂の記録。ライブでは歌えない一曲

「プロは感情があっても、ちゃんとステージで歌うんだよ」
そんな言葉をいただいたこともあります。

でも、私は言います。
これは、今は絶対に無理。

歌えなくていい。
それくらい、本物の愛を歌に閉じ込めたと思っています。

いつかまた、ルイが姿を変えて会いに来てくれたら――
そのときは、もしかしたら、ちゃんと歌えるのかもしれません。

でもそれまでは、この曲は魂の記録として、
ただただ「彼が生きていた証」として、そっと届けたいと思います。

ルイ、ありがとう。
あなたが守ってくれた時間、ずっと忘れないよ。
今もきっと、毛皮を脱いで、軽やかに走り回っているんだろうね。
パパとママは、あなたの歌を胸に、これからも歩いていくよ。